デスクワークや通勤のあとに、肩の重さや首まわりのこわばりが気になることはありませんか。忙しい日でも取り入れやすいセルフケアのひとつが、手や腕にあるツボをやさしく押す方法です。
この記事では、東洋医学で肩や首の不快感に用いられてきた合谷・手三里・後谿・労宮の位置と、無理のない押し方を紹介します。
ツボ押しによる感じ方には個人差があり、肩こりの改善を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、脱力などがある場合は、セルフケアだけで様子を見ず、医療機関へ相談してください。
手のツボ押しと肩こりの関係
東洋医学における経絡とツボの考え方
東洋医学では、身体には「経絡(けいらく)」と呼ばれる通り道があり、その途中にツボが存在すると考えられてきました。手や腕には、肩や首の不快感に対して伝統的に用いられてきたツボがあります。
ただし、経絡や気の流れは東洋医学独自の考え方であり、血管や神経のように現代医学の解剖学で確認された構造ではありません。ツボの名称や位置は、伝統医療の枠組みに基づくものとして理解することが大切です。
セルフ指圧の効果には不明確な部分もある
ツボの周辺をやさしく押すと、圧迫される感覚や手が温まる感覚によって、心地よさや気分転換につながる場合があります。
一方で、手の特定のツボを押すことで、離れた肩や首の筋肉へ直接作用する仕組みが明確に証明されているわけではありません。鍼治療については首などの痛みに関する研究がありますが、鍼を使用する施術と、自分の指で行うツボ押しは同じものではありません。
手のツボ押しは、医療の代わりではなく、無理のない範囲で行う補助的なセルフケアとして取り入れましょう。
肩こりが気になるときに押しやすい手のツボ4か所
ここでは、自分でも位置を確認しやすい4つのツボを紹介します。身体の大きさや骨格には個人差があるため、位置はおおよその目安として確認してください。
合谷(ごうこく)|親指と人差し指の骨の間
合谷は、手の甲側にあるツボです。親指と人差し指の骨の間をたどり、人差し指側の骨の中央付近にあります。
反対の手の親指を当て、人差し指側の骨へ向けてやさしく圧をかけます。手のひら側から人差し指を添えると、安定させやすくなります。
合谷は、東洋医学では頭や首まわりの不快感などに用いられてきたツボです。ただし、押したからといって肩こりや頭痛が必ず軽くなるわけではありません。
手三里(てさんり)|肘から手首側へ少し下がった場所
手三里は、肘を曲げたときにできるしわの外側から、手首側へ指幅2〜3本程度下がったところにあります。前腕の親指側にある筋肉の上が目安です。
反対の手で腕を支えながら、親指の腹を当ててゆっくり押します。場所には個人差があるため、痛い場所を強く探す必要はありません。
東洋医学では、腕や肩まわりの疲れが気になるときなどに用いられてきました。デスクワークで手や腕を使ったあとのセルフケアとして取り入れやすい場所です。
後谿(こうけい)|小指の付け根の外側
後谿は、手を軽く握ったとき、小指の付け根の外側にできるしわの端付近にあります。
反対の手の親指を当て、手のひらを支えながらゆっくり押します。骨の上を強く押すのではなく、周辺へやさしく圧を加えましょう。
東洋医学では、首や肩まわりの不快感に用いられてきたツボのひとつです。首を動かしたときに強い痛みがある場合は、無理に押さず医療機関へ相談してください。
労宮(ろうきゅう)|手のひらの中央付近
労宮は、手のひらの中央付近にあります。軽く握ったときに、中指の先が触れるあたりが位置の目安です。
反対の手の親指を当て、手のひら全体を支えながらやさしく押します。押すことに集中しすぎず、ゆっくり呼吸しながら行うと落ち着いて取り組みやすくなります。
労宮は、東洋医学では緊張や疲労感が気になるときなどに用いられてきました。全身の血流促進や肩こりへの効果を保証するものではありません。
手のツボを押すときの力加減と時間
痛みを我慢せず心地よいと感じる強さで押す
ツボ押しは、強く押すほどよいわけではありません。軽い圧迫感があり、心地よいと感じる程度の強さで行いましょう。
強い痛み、しびれ、不快感が出るほど押すと、皮膚や筋肉を傷める可能性があります。特に初めて行う場合は、ごく弱い力から始めてください。
押したときの痛みや「ズーン」とした感覚は、ツボへ正確に当たっていることや、効果が出ていることを示すものではありません。痛みを探すように押すことは避けましょう。
短時間から始めて皮膚や筋肉の状態を確認する
押し方の一例として、ひとつの場所を3〜5秒ほどやさしく押し、その後に力を緩めます。この動作を数回繰り返す程度から始めるとよいでしょう。
ただし、この時間や回数は医学的に統一された基準ではありません。皮膚に赤みや痛みが残る場合は回数を減らすか、中止してください。
同じ場所を長時間押し続けたり、短時間に何度も強く刺激したりする必要はありません。
職場や電車で手のツボ押しを取り入れる方法
デスクワークの休憩に取り入れる
手のツボ押しは道具を必要としないため、作業の区切りや休憩時間に取り入れられます。机の上や膝の上に手を置き、楽な姿勢で行いましょう。
ただし、肩まわりの負担を減らすには、手のツボを押すだけでなく、同じ姿勢を長時間続けないことも大切です。定期的に立ち上がる、肩をゆっくり回す、腕や目を休ませるといった工夫も組み合わせましょう。
電車では安全な姿勢で行う
電車の中では、座っているときや身体が安定しているときに行いましょう。立った状態で両手を使うと、急停車や揺れに対応できない可能性があります。
スマートフォンを見ながら無理な姿勢で押すのではなく、背もたれなどを利用して身体を安定させ、周囲の人の迷惑にならない範囲で行うことが大切です。
手のツボ押しと組み合わせやすいセルフケア
ゆっくりした呼吸を意識する
ツボを押すときに呼吸を止めてしまうと、肩や腕に余計な力が入りやすくなります。鼻から無理なく息を吸い、口または鼻からゆっくり吐きながら、肩の力を抜きましょう。
ゆっくり呼吸することで、気持ちを落ち着けやすくなる場合があります。ただし、深呼吸とツボ押しを組み合わせても、肩こりへの効果が必ず高まるわけではありません。
手を温めてから行う
冷えた手を押すのが不快に感じる場合は、ぬるめのお湯や蒸しタオルで手を温めてから行う方法もあります。
手浴を行う場合は、38〜40℃程度の熱すぎないお湯を目安にし、短時間から試してください。熱さを感じにくい方や皮膚に異常がある方は、やけどを防ぐため自己判断で行わないことが大切です。
手を温めることは、心地よさやリラックスのための工夫です。ツボへの刺激が肩へ届きやすくなる、全身の血流が大きく改善するといった効果を保証するものではありません。
手のツボ押しを控えた方がよい状態
次のような場合は、患部を押さないか、医師などへ相談してから行いましょう。
- 手や腕の皮膚に傷、炎症、湿疹、やけどがある
- 手や腕を負傷し、腫れや強い痛みがある
- 発熱や強い体調不良がある
- 押す場所にしびれや感覚の低下がある
- 妊娠中または産後で、身体の状態に不安がある
- 出血しやすい病気がある、または血液を固まりにくくする薬を使用している
- 飲酒により判断力や感覚が低下している
妊娠中は、合谷を含む特定のツボだけを自己判断で強く刺激するのではなく、ツボ押しを行ってよいか医師や助産師へ確認してください。
肩こり以外の症状がある場合は医療機関へ相談する
肩こりのように感じる症状でも、首や肩の病気、神経の障害、内科的な病気などが関係している場合があります。
次のような症状がある場合は、ツボ押しだけで様子を見ず、医療機関へ相談してください。
- 強い痛みが続いている
- 腕や手にしびれ、脱力、動かしにくさがある
- 転倒や事故のあとから症状が出た
- 発熱、強い頭痛、めまいなどを伴う
- 胸の痛み、息苦しさ、冷や汗などを伴う
- セルフケアを行っても症状が長く続く、または悪化している
突然の激しい痛みや胸の痛み、息苦しさなどがある場合は、速やかな受診が必要です。
肩まわりの負担を減らすために見直したい日常習慣
同じ姿勢を長時間続けない
デスクワークやスマートフォンの使用などで同じ姿勢が続くと、首や肩の筋肉へ負担がかかりやすくなります。
モニターを見やすい高さに調整する、肘や腕を机で支える、椅子へ深く座るなど、無理の少ない作業環境を整えましょう。作業の合間には、立ち上がったり、肩や腕をゆっくり動かしたりすることも大切です。
痛みがある状態で強く肩を回したり、無理に首を伸ばしたりすることは避けてください。
睡眠環境を整える
身体を休めるためには、睡眠時間だけでなく、就寝前の過ごし方や寝室の環境も大切です。
就寝前はスマートフォンやパソコンの使用を早めに切り上げ、照明を明るくしすぎないようにすると、落ち着いて休む準備をしやすくなります。
枕が高すぎる、低すぎるなど、寝具が合っていないと感じる場合は、高さや硬さを見直してみましょう。ただし、枕を変えるだけで肩こりが改善するとは限りません。
手のツボに関するよくある疑問
ツボを押しても痛くない場合は効いていない?
押したときに痛みがないからといって、位置が間違っている、または効果がないとは限りません。
ツボ押しによる感覚には個人差があります。また、痛みや強い刺激は効果を判断する基準ではありません。感覚が弱くても力を強くせず、心地よく行える範囲に留めましょう。
手のツボは毎日押してもよい?
押した場所に痛みや赤みが残らず、体調にも問題がなければ、短時間のセルフケアとして取り入れることはできます。
ただし、毎日続ければ一定期間で肩こりが改善するという基準はありません。押した場所に違和感が出た場合は、いったん休みましょう。
ツボ押しだけで肩こりを根本的に改善できる?
手のツボ押しだけで、肩こりの原因を取り除けるとは限りません。肩まわりの不快感には、同じ姿勢、身体の使い方、疲労、ストレス、睡眠環境のほか、病気やけがなどさまざまな要因が関係します。
ツボ押しは、気分転換やリラックスを目的とした補助的なセルフケアとして考えましょう。症状が強い場合や長く続く場合は、医療機関で原因を確認することが大切です。
手のツボ押しは無理のない範囲で取り入れよう
合谷・手三里・後谿・労宮は、東洋医学で肩や首まわりの不快感などに用いられてきたツボです。手や腕にあるため、職場や自宅などで比較的取り入れやすいという特徴があります。
ただし、特定のツボを押せば肩こりが必ず軽くなるわけではありません。痛みを我慢せず、心地よいと感じる程度の力で、短時間から試してください。
同じ姿勢を長時間続けないことや、作業環境、休息、睡眠習慣を見直すことも大切です。強い痛み、しびれ、脱力、胸の痛みなどがある場合は、ツボ押しを続けず、医療機関へ相談しましょう。
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